本研究の目的は、エネルギー分解能の優れたゲルマニウム半導体検出器と検出効率に秀でたNaIシンチレータの複合により、両者の特徴を活かした高エネルギーガンマ線検出器系の実用化を計ることにある。そのための最も重要な開発要素は、検出器系から一部洩れ出すガンマ線成分を効率良く除去する、雑音除去用検出器の開発である。既存のものでは不十分であった雑音除去能力を、この検出器系に最適化した除去用検出器を加え、大幅に向上することを目指す。本年度においては、この雑音除去用検出器の設計、製作を行なった。 雑音除去用検出器の設計においては、本検出器系が複合型であり、配置が複雑であることから、安易にお行なわず、慎重を期した。具体的は、次の二通りの設計を行ない、比較検討を行なった。一つは、安価ではあるが、ガンマ線に対する吸収効率が悪く、大容量化が必然であるプラスチック・シンチレータを用いて、広く覆う設計である。もう一方は、逆に高価ではあるがガンマ線に対する吸収効率に秀でたBGOシンチレータを用いて、小容量の検出器を雑音除去に最も効果的な場所に配置するというものである。後者は非常に魅力的なアイデアであり、これに重点をおいて設計作業を行なったが、結局、大容量化を免れず、前者の設計を採択することとした。 現在、この検出器の製作を終え、検出器自身の性能テストも終了している。本年度に行なう予定であった九州大学タンデム加速器を用いた本検出器系の性能テストに関しては、上述の通り設計作業に大きな時間を割いたため現時点ではまだ行なえていないが、間もなく実施する予定である。
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