研究概要 |
有限温度における場の量子論の相構造を調べる有力な物理量である有効ポテンシャルを改善するための処方を検討した。摂動論による有効ポテンシャルは実質的には有限の次数(order)しか計算できない。そこで、有限の次数の知識を基に有効ポテンシャルを改善できれば、相構造(相転移温度など)を調べるのに有効である。そのような改善方法はいろいろ提案されているが、我々は有効ポテンシャルを繰り込み群を満足するように簡単かつ有効に改善する処方を提案した。 この処方の本質は有効ポテンシャルと繰り込み群方程式の係数関数のL-loopまでの知識に基づいて、Lth-to-leading orderまでのlarge-log項と共にlarge-T項のシステマチックな再足し上げを行うことにある。これによって、繰り込み群方程式を満足し、Lth-to-leading TとLth-to-leading log項まで正確である改善された有効ポテンシャルが得られる。本年度はこの処方を具体的にmassive O(N)λ φ^4理論に適用し、相構造の解析を行った。具体的には1-および2-loopの有効ポテンシャルについて実行した。さらに、他の改善方法(self-consistensy method,tadpole method等)との比較検討を行った。種々の改善処方と近似の範囲内では一致し、また、我々の手法の方が低い次数で同じorderまで改善されるなど優れている点なども明らかになった。以上の結果の一部は研究会で講演発表を行い、現在学術雑誌に論文を投稿中である。 他のモデル、具体的には電弱(electroweak)理論への応用は、現在実行中である。 また、上記のアプローチとは別に、相構造を調べるのに有効な処方としているSchwinger-Dyson方程式を用いた方法についても、量子電磁力学(QED)をモデルとして有限温度版を構築し、その解析を行いつつある。
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