研究概要 |
現在のところ2ループ積分を解析的に計算する方法は一般的には知られていない。このため大きく分けて次の2つの接近の仕方で計算が試みられている。一つは外線の運動量で2ループ積分を展開し、展開係数を数式処理によって求め、それを最後に数値化する方法と、2ループ積分を何らかの表示で数値積分を直接行なってしまう方法である。今年度の研究ではファインマンパラメータ積分を数値積分する方法の確立を行なった。ファインマン積分は超関数の積分であるため数値積分を行うことは困難であるとされ、1ループ積分では一般的な解析積分が行なわれてきた。しかし、モンラカルロ積分法の一手法である負関数をとる方法を拡張することにより超関数の積分を可能なものとした。この方法により2点関数及び平面型3点関数の2ループ積分の数値化に成功した。折しも世界的にも2ループ補正の重要性が認識され初め、今年度にはロシア,オランダ又ドイツでは2グループが標準理論における2ループ積分が手がけられるようになった。本研究は他のグループに先駆けて数値結果を示すことができたため、ドイツの2グループ及びロシアのグループのそれぞれから結果の照合の問い合わせを受け、いずれにおいても一致と見ている。特に先に書いた展開係数を求める方法を採るグループにとっては展開の正当性を保証するものとして今研究結果との照合は不可欠となっている。現在の課題は交叉型3点関数の積分の数値化であり、未だどのグループも成功するに至っておらず激しい競争となっている。
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