超イオン導電体は固体電解質材料や機能性素材としての利用が注目されているが、その基礎物性に関する理解はまだ不十分である。本研究の目的は、その重要性にも拘わらず、これまであまり目を向けて来られなかった固体電子論の立場から、超イオン導電物質の特徴を捉えると共に、超イオン伝導の微視的機構を解明し、新しい超イオン導電体開発のための糸口を提供することであった。この研究目的に沿って、本年度は以下の研究を行なった。 1.超イオン導電性を示す物質の価電子密度分布は、他の物質のものと比べ、エネルギー的に励起されやすく、変形しやすい分布をしていることを擬ポテンシャル法を用いた計算で示した。 2.超イオン導電体における化学結合とイオンのダイナミックスとがどの様に関わりあっているのかを、擬ポテンシャル法を用いた計算で明らかにした。 3.原子軌道の節半径を用いて新しい電気陰性度のスケールを導入した。また、このスケールを利用して、超イオン導電ガラスにおけるイオン伝導度の化学的スケーリングの考えを提案した。 これらの研究成果は、裏頁に記載されている論文で発表されている一方、以下の学会でも口頭発表された。第29回応用物理学会北海道支部学術講演会(1994年1月、札幌)、日本物理学会第49回年会(1994年3月、福岡)、第4回固体イオニクスアジア会議(1994年8月、マレーシア)、第14回固体イオニクス研究会(1994年8月、札幌)、日本物理学会秋の分科会(1994年9月、静岡)、第20回固体イオニクス討論会(1994年11月、東京)、第100回日本物理学会九州支部例会(1994年11月、熊本)。
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