研究概要 |
置換型グラファイト状化合物BC_3,BC_2N,C_3Nのそれぞれのmonolayerに対して、第一原理からのセルフコンシステントなバンド計算を実行し、その分散関係と状態密度を計算した。手法は、密度汎関数法に基づく数値基底を用いたLCAO法で、局所密度近似の範囲内で行った。また、電子分布の計算、特に、フェルミ準位近傍の状態(π状態)の電子分布の計算を行い、これら一連の物質のπ電子の分布の様子を比較した。 計算結果によると、これらのmonolayerはすべて半導体となる。価電子帯のtop近傍はπ状態に対応しており、σバンドはさらに低いエネルギー位置に存在している。BC_3に関するこの結果は、Cohenたちのグループによる計算結果と異なっており、さらなる検討が必要である。また、電荷移動の量の見積りも行い、Bはドナー、Nはアクセプターとして働くことを定量的に示した。さらに、価電子分布の計算によって以下のことが明らかになった。(1)BC_3においては、Cどうしが共有結合によってしっかりと結合した6角形のリングをつくり、それがBと弱い共有結合で結び付いている。(2)一方、C_3Nにおいては、CリングはN原子とかなり強く結合していて、蜂の巣格子を形成している。(3)BC_2Nにおいては、これらの中間的な特徴を持っていて、CとNが6角形リングを作りそれがBと弱く結合している。 また、今後の研究として、BC_3,BC_2N,C_3Nの層間にカリウムをインターカレートして合成される層間化合物に対して、上記の計算手法を用いてセルフコンシステントなバンド計算を実行することを予定している。そこで得られたバンド構成を、母結晶のバンド構造と比較することにより、インターカレーションの影響が電子構造にどのように反映され、どのような物性の変化が期待されるのかを調べるつもりである。
|