本研究の目的は、GaAs/AlAs超格子においてStark局在状態が生じたときトンネル電流(ツェナ-電流)がどのような影響を受けるかを調べることである。ツェナ-電流は価電子帯と伝導帯の間を流れるので、Stark局在状態との電場による混成を正しく評価しなければならない。 そこでまず電場によるバンド間の混成について理論的に調べた。その結果、短周期超格子では伝導帯においてAlAsのXバンドが低エネルギーとなるため電場を加えることによりGaAsのバンドとの混成を生じ、さらにその混成のために光学遷移確率が増大することを計算により導いた。この計算結果は(GaAs)_8/(AlAs)_8を試料として用いた変調分光測定の結果をうまく説明することができた。 またp-i-n構造の試料を用いて行った測定では、1-2Vの印加電圧で、電流の周期的な振動を観測した。これはDi Carloらによって予言されていたWannier-Stark振動(ツェナ-電流がStark局在状態により強められることによる)と呼ばれる現象で、本研究で初めて観測された。
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