波長3000〜7000nmの領域で赤外の波長可変光源を得るために、まず、パルスYAGレーザーの倍波でTi:Sapphireを励起し、波長可変パルスTi:Sapphireレーザーを制作した。この光源とパルスYAGレーザーの基本波との差周波変換方式を用いて、波長2500〜4200nmの領域での波長可変赤外光源が得られた。また、試料を入れるための、赤外と可視の光源を透過させる光学窓つきの液体ヘリウム用クライオスタットを制作したが液体ヘリウムを溜める時間が短かったので(約2時間)、本実験にはフロー型のクライオスタットを用いた。幾つかのポリマーにドープした色素分子を対象に、CWのArレーザー励起の色素レーザーを用いてホールを開けた後、制作された波長可変赤外光源を用いて赤外光励起によるホールのフィリング過程を調べた。開けられたホールの強度が時間によって変化したが、変化量が少なく、赤外光照射による熱効果との区別はできなかった。また、制作された赤外光源の波長可変域内では分子振動モードに対応づけられるほどの変化は見られなかった。問題点としては、制作された波長可変赤外光源のパワーが弱くまたその可変波長域が狭いことやフロー型のクライオスタットを用いたため、熱効果を排除できなかったことなどが考えられたが、今後パルスTi:Sapphireレーザーの共振方式などに改良を加え非晶質のミクロな構造変化の詳細を調べるための分光法の開発を進める予定である。
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