研究概要 |
本研究では,強相関電子系物質の真空紫外領域の光反射スペクトルの測定を,測定チャンバーと共通の真空槽内で準備した試料表面を用いて行うことが目的であった.強相関電子系物質,特に希土類化合物は酸化しやすく,これまで,ヘリウムガス雰囲気中で表面の処理を行ってきたが,本研究費で導入した試料準備槽をもちいることによって,試料表面を新鮮な状態に保ち測定することが可能になった. 研究内容は,まずヒ化セリウム(CeAs)とその参照系であるヒ化ランタン(LaAs)の光反射スペクトルを上記の試料準備槽を用いて,2meV〜32eVの光の範囲で測定し,解析を行った.その結果,CeAsでは約10Kの温度でヘビーフェルミオンによるものと考えられるドル-デ型の吸収が観測された.この状態は低温になって初めて観測されるものであり,また,ヘビーフェルミオンの直流電気抵抗の結果に外挿できることから,この結論が得られた.また,この物質は価電子帯と4f電子の混成が強いと考えられているが,光反射スペクトルと共鳴光電子スペクトルの測定・解析から,価電子帯と4fとの混成が他のCe化合物と比較して強いことが明確になった. その他,世界的にも行われていない,放射光を用いた磁場中での遠赤外領域での分光を開始した.放射光を用いる利点は,通常光源に比べ,100cm^<-1>以下で輝度が高いことと偏光が自由に選択できることにある.対象は高温超伝導体のc軸方向のプラズマによる吸収であり,超伝導状態で生じたプラズマと外部磁場によるvortexとの相互作用を観測した.この結果は,東北大金研の立木等による理論でよく説明できることがわかった.
|