不純物半導体の金属絶縁体転移における臨界指数の問題を解決するためには、転移近傍を精密に調べるための手段と考えられている圧力誘起転移のメカニズム、特に、圧力と有効電子濃度の関係を明らかにすることが必要である。われわれは本研究において、このメカニズムを調べることを目的として、いろいろな電子濃度をもつSi:P試料について電気伝導度の圧力依存性を低温で測定し、金属側の試料と絶縁体側の試料の間の比較を行い、絶縁体側の試料については、転移の起こる臨界圧力と電子濃度の関係について調べた。 圧力依存性の精密な測定のためには、試料に実際に加わっている圧力を正確に決定することが必要である。そのために、試料直上の圧縮バネを圧力センサーとして利用した、新型の加圧クライオスタットを設計製作し、良好な動作を確認した。 0.6Kでの電気伝導度の圧力依存性を3kbar以下の範囲で調べた結果、金属側の試料では変化が2割程度以下であるのに対し、絶縁体側の試料では、10倍近く変化を示すことがみられた。その結果、加圧することにより、金属側と絶縁体側の試料の組において電気伝導度の逆転現象が観測された。この結果は、Bhattらによる圧力誘起転移の簡単な理論の範囲では説明できないものである。絶縁体側の試料については、電子濃度の小さい試料ほど臨界圧力が大きくなることが示された。臨界圧力と電子濃度の関係を定量的に求めるために、更に多くの試料についての測定を引き続き実行中である。
|