研究概要 |
規則型複合ペロブスカイト酸化物磁性体の興味深い構造と磁性との関連に注目して研究を進めている。この系のなかで最も単純な構造をもつ立方晶の反強磁性体Ba_2NIWO_6についてすでに単結晶作成に成功し物性の測定が進められている。本課題研究においては前記Ba_2NIWO_6と比較対照すべき物質である正方晶Sr_2NIWO_6の単結晶作成とその磁性の測定が目的であった。Sr_2NIWO_6の単結晶作成はBa_2NIWO_6に比較してかなり困難であったが、フローティング・ゾーン法により十分な大きさの単結晶が、知る限りでは世界で初めて得られた。この結晶を用いてSQUIDによる精密磁化測定を行い,Ba_2NIWO_6との比較データが得られた。磁気的転移温度はほとんど同一であるにも関わらず、明瞭な相違点が見いだされている。また日本原子力研究所改造3号炉において中性子非弾性散乱実験を11月に実施し、磁気励起スペクトルの観測を単結晶の主要な軸方向について行い、その分散関係を得た。詳細な解析は現在進めているところであるが、この系の構造の大きな特徴であるきわめて長距離に隔てられている磁性イオン間の超交換相互作用について新しい知見が得られるであろう。
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