研究計画に述べたようにYbSiは結晶作製に非常に困難があった。そこで本研究のほとんどはSiと比較的反応しにくい材料を捜すことにあてられた。特にW(タングステン)るつぼの中にさらにPBN(パイロリティックボロンナイトライド)のるつぼを挿入して、SiとWの直接の接触をさけるという方法を試した。従来PBNは半導体メーカーでSi単結晶の作製にも使用されており1500度程度までは耐えうることが知られていたが、YbSiの結晶作製に必要な1800度程度での耐久性は知られていなかった。今回我々はYbSiをはじめUCu_5等のアクチナイド化合物についてもPBNるつぼを使用した。その結果アクチナイド化合物についてはこの方法が有効であるが、YbSiに関してはPBNとSiが高温でかなり反応し結晶作製は困難であることがわかった。Wるつぼに直接原材料を封入して短時間だけ加熱することも試みたがYbSiの純良な結晶を得るにはいたらなかった。しかしPBNという新素材についてアクチナイド化合物では有効であるという新たな知見を得ることができ、今後の結晶作製で有効に使用されることが期待される。また電気抵抗とホール効果の測定装置は、今回新たに作製しすでに測定可能になっており、さらに結晶作製を続行してこれについて測定予定である。 YbSiとの比較を行う予定であったYbモノプニクタイトについては、YbSbが従来知られていなかった複雑な磁気相図を持つことを磁化測定とNMR測定から明らかにした。特に中間相に四重極秩序という特殊な秩序相が存在していることと非常に小さな磁気モーメントの秩序があることを指摘し、メスバウワ-効果の実験で観測されていた相転移が中性子回折では観測されなかったことを矛盾なく説明した。
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