研究概要 |
本研究予算で作成した、高圧力下での物性測定装置を用いて特定の導電性高分子化合物(六フッ化燐をドープしたポリ(3-メチルチオフェン),以下PMeTと略す)の電気抵抗を、温度範囲:1.4〜300K、圧力範囲:大気圧〜14kbarという広い測定条件下で測定することに成功した。その結果、PMeTにおいて、圧力によって電気抵抗が低温で半導体的なものから金属的になる抵抗反転現象が起きることが見いだされた。この現象はこれまで関連した構造をもつポリマー(六フッ化燐をドープしたポリピロール)でのみ見いだされていた現象であったが、この実験結果によりポリピロール特有の現象ではないことが明らかになった。 上述の抵抗反転現象の原因はこれまで様々に議論されているが、いずれも電気抵抗以外の物性(たとえば熱起電力)を統一的に説明できる解釈が得られているとはいいがたかった。本研究代表者は、PMeTで測定されたデータを詳しく解析した結果、以下の段落で示すような諸物性を説明しうる新しい解釈を考え出した。 これまで導電性高分子化合物の電気抵抗の温度依存性は、金属的な温度依存性を示す領域とそのような金属領域間のバリヤ-領域(半導体的な温度依存性を示す)の直列回路の抵抗でよく説明されると考えられていた。ところが抵抗反転現象はこのモデルでは説明しがたかったが、本研究代表者はこれに加えてアモルファス金属領域が存在すると考えると、その部分からの寄与を加えることで、PMeTの電気抵抗の反転、熱起電力の屈折などの実験結果が矛盾なく説明できることを見いだした。
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