1.不純物を含む超伝導・常伝導・超伝導(SNS)接合の格子モデルに対して転送行列法を適用し、臨界ジョセフソン電流の数値シミュレーションを行った。様々なパラメータにおいて臨界電流の不純物平均を数値的に評価した結果、臨界電流に現れるメゾスコピック揺らぎの振幅は、(超伝導コヒーレンス長ξと比較したときの)常伝導部分の長短によって定性的に変化する事を明らかにした。特に常伝導部分がξより十分に長い場合、揺らぎの振幅は相関エネルギーによって特徴付けられることが分かった。この結果はAltshuler and Spivakによる解析的な理論と定性的には一致するが、得られた揺らぎの振幅は彼等の理論の約2倍に相当し、定量的な一致は得られなかった。(Y.Takane:J.Phys.Soc.Jpn.63(1994)4310.) 2.数値シミュレーションとの比較を行うため、温度グリーン関数法を用いてSNS接合(常伝導部分がζより長い極限)におけるメゾスコピックな臨界電流揺らぎの振幅に対する解析的な表式を得た。それは上記の数値計算結果と定量的に一致するだけでなく、高柳のグループ(NTT)による最近の実験結果をも定量的に説明できることが分かった。(この成果は、J.Phys.Soc.Jpn.に投稿中。) 3.磁場下の(不純物を含む)SNS接合におけるコンダクタンスの相関関数をグリーン関数法によって計算した。その結果、通常の金属で観測されるコンダクタンス揺らぎの普遍性はSNS系では破れ、揺らぎの振幅は系のサイズに強く依存することが分かった。特にN部分が位相干渉長より十分に小さい場合、揺らぎの振幅が異常に増大することを導いた。(Y.Takane:J.Phys.Soc.Jpn.63(1994)2849.)
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