酸化物超伝導体等の強い電子相関のある系での超伝導発現のメカニズムとして、磁気的な揺らぎがあげられている。そこで、もし、磁気的な揺らぎが原因で、超伝導になる物質が他に見つかれば、このような系の超伝導発現のメカニズムの解明に、大きな役割を果たすことが期待できる。本研究の目的は、その候補としてあげられるβ-Mnが、超高圧超低温下で、超伝導になるかどうかを確認することである。この目的に沿って研究を行い、以下のように進行した。 まず、試料をプレスするためのBeCuでできた圧力セルをつくった。この中に、試料と圧力媒体を入れ、室温でプレスし(現有のプレス機を用いる。)、静水圧をかける。この圧力媒体として、フロリナ-トを用いた。これは、化学的に不活性で、試料に端子を取り付けるための銀ペーストを劣化させない。また、端子の取り出し口のシールは、スタイキャスト2850GTを用いた。 現在のところ、圧力セルの中にカーボン抵抗をいれ、希釈冷凍機にセットし、冷却のテストを行っている。このテストでは圧力はかけていない。温度は、200mK付近までしか下がっていないが、まだ改良の余地は多く残されている。 また、試料としてスズを用いた予備的な実験も行っている。スズは、大気圧で3.722Kで超伝導に転移し、圧力とともに転移温度が変わる。転移温度の圧力依存性はあらかじめわかっているので、測定の可否の判定ができる。圧力セルの中には、スズ以外にマンガニン線も入れる。スズの転移温度を用いてマンガニン線の電気抵抗の圧力依存性の校正をすれば、以降はマンガニン線の電気抵抗を測定するだけで、圧力がわかるようになる。
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