研究概要 |
S=3/2のハイゼンベルグ型一次元反強磁性体であるCsVCl_3の一次元鎖方向の中性子非弾性散乱実験を行なってきた結果、これまでに、T=40K(>T_N=13K)での磁気励起の測定によって、ブリルアンゾーン境界での励起エネルギーε_<ZB>が75meVであり、また、励起の線幅Γが4.3meVで、古典論(1.8meV)^<1)>に比べて大きく、線幅の大きさは波数に依存しないことを明らかにしてきた。古典論^<1)>では低温で ε_<ZB>(T)=4SJ-2SJκa,Γ(T)=2SJκa,κ(逆相関長)=k_BT/2JS^2a なる温度変化が示されている(J:一次元鎖内交換相互作用定数、a:格子定数)が、この系のスピン動特性を、古典論との比較において議論するために、本研究では、磁気励起の測定を20,50,80,120,200Kの温度に対して総量20ccの単結晶試料を用いて行なった。各温度での非弾性散乱スペクトルを線幅Γが波数に依存しないローレンツィアンでフィットしてε_<ZB>(T)とΓ(T)を得た。ε_<ZB>(T)は温度とともに減少し、Γ(T)は温度とともに増大するが、いずれも古典論とは異なった振舞をすることが明らかになった。これらの振舞は、相関長が量子効果によって古典論で予想される値より小さくなっていることによって説明できそうであり、その点を解明するための実験が必要になった。なお、補助金は、温度測定用機器、試料作成用原料試薬及び中性子散乱実験用サンプルホルダーの購入、並びに、研究打ち合わせ等のための旅費、データ解析等に対する謝金に使った。 1)G.Reiter and A.Sjolander,J.Phys.C: Solid State Phys.,13(1980)3027.
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