本年度表記課題のもと、主に風紋形成の非線形動力学、および、砂丘形成の動力学の研究を進めてきた。手法としては連結写像格子と呼ばれる数値的方法を用い、様々な条件のもとで、風紋や砂丘ができあがる過程を再現した。 先の風紋形成のシミュレーションと線形解析では、風がある敷居値以上の強さになると風紋の周期構造生成されることを示したが、今回は、風がさらに強い場合、系の非線形性が強まり、線形解析では得られない現象が見られようになることを示した。具体的にはコントロールパラメータ(風の強さ)に依存して空間的な倍周期分岐や3倍周期への移行、さらに、非常に乱れた相への移行が起こることを発見し、それらの相の間の転移点がコントロールパラメータの履歴に依存することが分かってきた。一方砂丘の形成のシミュレーションでは、少数の仮定による非常に単純な模型を使って、様々な形状の大規模な孤立砂丘の形成過程を大まかに再現することに成功した。これにより、砂丘の大規模で多様なパターン形成に関して、2次的な風、すなわち、砂丘の風下側での渦や乱流などの存在は、必要条件でないことが明らかになった。また、バルハンと呼ばれる砂丘について、2次的な孤立波として振る舞うことを定性的に示し、同時に一次元模型でより定量的な性質を調べた。具体的には、孤立波のスピードと高さが互いに逆比例することを明らかにした。 以上の結果は、論文として雑誌に発表されるとともに日本物理学会、および、日本地質学会、三鉱学会など複数の学会で講演発表されており、その学際的な研究内容と結果は非線形物理学と地球環境を直接つなぐ新たな学際領域構築の布石になることが期待される。
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