分子間の磁気的相互作用の考察から反強磁性S=1カゴメ格子ととらえることができる(m-MPYNN^+)・X^-系について、磁気的相互作用に対する対イオンの影響について検討を加えた。まず、X^-=I^-<BF_4^-<CIO_4^-と対イオン交換を行った塩について、格子定数および帯磁率の測定を行った。その結果を以下の表に示す。すべての結晶は三方晶系に属し、対イオンのサイズが大きくなるにつれて、二次元面を構成するa軸長が顕著に増大する。それに対し、積層方向であるc軸長については大きな変化は見られない。次に磁気的パラメータについては、ダイマー内の強磁性的相互作用であるJ_1についてほとんど変化なく約10Kで一定であるのに対し、スピンフラストレーションと大いに相関のあるダイマー間の反強磁性的相互作用J_2については、対イオン交換の効果が顕著に現れている。これらの結果は対イオンのサイズがダイマー間の配向を変化させ、その結果として、磁気的パラメータが変化するものと解釈される。また複塩を調製することにより、対イオンのサイズをコントロールし、カゴメ格子反強磁性体の磁気的パラメータの連続的変化が可能であるということを示した。
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