研究概要 |
本研究では、昨年度本研究者が開発を行ったミニネットワークMT法観測装置にさらに改良を加え、伊豆大島三原山南縁部で同装置を用いた観測を行った。従来のELF,ULF-MT法観測では、電場磁場それぞれ水平2成分のみの観測を行ない、順次観測点を移動して地域の地下電気伝導度分布を求めてきた。昨年度の研究で、その従来の観測に加えて電場を6チャンネルで測定する装置を開発し、現有のMT法観測装置に接続して用いる形で一度に電場8チャンネル・磁場の水平2成分のデータが取得出来るようになった。昨年度の段階では、磁場2成分の測定点を中心として8電極点(約200m四方)で取り囲む領域のデータを1回の観測で取得し、次々にサイトの移動を行う形式を考えていた。しかし、昨年度のテスト観測の結果、8電極を直線上に配置しケーブルをその電極点で接続しつつコネクタで次々に測線を伸ばしていく形のほうが、よりフィールドオペレーションが効率的になることが判明したので、ケーブルやコネクタ等をそのように作りかえた。 次に、本装置を用いた観測を伊豆大島三原山カルデラ南縁部で行った。以前行われたELF-MT方調査から、定比抵抗層の上面が浅くなっていると指摘された地点を中心に、800x800mの領域(即ち直線800mの観測を16回移動)で観測を行った。良好なデータが得られ、一次的な解析から、以前に指摘されていた定比抵抗層の存在を示唆する見かけ比抵抗、位相差曲線が得られた。この低比抵抗層は、地下水(あるいは熱水)の存在を示すものと思われるが、さらに解析をすすめ、また、観測域を拡大することにより、その低比抵抗域の微細構造や拡がり等が明らかになるものと思われる。また、繰り返し観測により、その変化を追うことも興味深い。
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