研究概要 |
これまで,地球磁場の成因を解明するための一手段として,地磁気データを用いて地球核内部流体運動を推定してきた.本研究では,得られた速度場から液体核内部のヘリシティ分布を求めた.ヘリシティはダイナモ理論において重要な要素であり,α-効果に関係すると考えられている. 核-マントル境界付近では,大西洋側の半球において得られたヘリシティの絶対値は大きくなった.この結果は,凍結磁場近似に基づいて得られた核表面付近の流体運動から得られたヘリシティ分布と一致する.得られたヘリシティの経度方向平均は,赤道面に対してほぼ対称になった.しかしながら,南北半球におけるコリオリ力の働きは逆向きになるので,ヘリシティは反対符号になると考えられている.また,運動学的ダイナモはα-効果は赤道面反対称の分布を持つように与えられる.理由として考えられることは,本研究では大規模な流れのみを取り扱っているので,乱流的な小規模な流れの影響が反映されていないということである.ただし,大規模な流れの運動学的ダイナモでは,赤道面対称のヘリシティ分布を持つものでも,ダイナモとして成立するので,詳細に関しては,今後の研究が必要である. 運動学的ダイナモの研究では,ヘリシティの体積平均がダイナモの効率に関係することが示唆されている.本研究で得られたヘリシティからは,その平均値が小さいことがわかった.その理由として,観測されている中で,今は一番大きな磁場である双極子磁場が減少している時期であることや,さらに小規模な流体運動が磁場成因に対して大きな影響を持っていることなどが考えられるが,現段階では不明である.今後の研究が必要である.
|