北緯36.0〜36.5°、東経140.5〜141.0°付近の深さ約50kmの地震を、中部、近畿地方の微小地震ネットで観測すると、P波とS波の間に顕著な後続波が見られる。本研究では、その後続波のもととなる速度不連続面の位置を求めるため、より震源域に近い、関東から東海、中部地方に展開されている防災科学技術研究所の微小地震観測網で得られた波形データを参照した。また、震源データについても、精度のよい防災科学技術研究所のものを参照した。 その結果、北緯36.3〜36.6°、東経140.4〜140.75°の深さ約50kmの地震にのみ、南関東から東海にわたる広い範囲の観測点で顕著な後続波が見られることがわかった。また、これらの地震は太平洋プレートの上面で発生したものであることも明らかになった。 これらの後続波は、震央距離100km以上の観測点で、P波初動の12〜20秒後に現れる。その見かけ速度を求めたところ、P波初動より遅く約7km/sであった。振幅はP波初動より大きい場合があった。また、上記の地域から少し離れた地域で起こる地震には後続波が見られなかった。以上のことから、この後続波は震源近傍の構造に起因するものであり、震源より上方に存在する不連続面でのSP変換波であることが明らかになった。 そこで、走時計算を行なった結果、この後続波は、震源から水平方向に射出されたS波がフィリピン海プレート北東端部にあたる速度不連続面で上方に屈折し、フィリピン海プレート最上層の海洋性地殻の下面でP波に変換し、海洋性地殻中をチャネル波のように伝わった波であることがわかった。そして、この後続波の走時に基づき、フィリピン海プレートの北東端部の位置の推定を行なった。
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