本研究では、ここ数年に数値科学で発展してきた新しい解析法を、地震学のいろいろなデータに応用した。単なる一方的な応用にとどまらず、地震学での有効性を示し、実用面から逆に数学的基礎の発展や裏付けを与える。 1.フーリエ変換に代わる、新しい時系列解析法として提案されてきたウェーブレット変換を各々の地震記録に応用して、その有効性を調べた。正規直交系であるMeyer-Yamadaのウェーブレットを用いて、強振動中の送れてやってくる波の同定及微表面波の群速度の測定を行った。特に後者では、測定値のものばかりでなく測定の分解能までも厳密に定義できることを示し、この解析法の新しい本質の一部を具体的に確認した。そして、通常の方法では測定の難しい高次モードの表面波についても、測定可能であった。もうひとつの正規直交系ウェーブレットであるDaubechiesのものについても解析法を行い、Meyer-Yamadaのものと相補的に応用できることをみつけた。 2.ここ数年来、桜島火山で行ってきた広帯地域地震計観測では卓越同波数が非定常的に変化する火山性微動がいくつも観測された。マグマの軌道とこの現象は関係あると考えられ、何らかの非線形振動であることが予想される。この記録をフーリエ解析で同波数の時間変化を調べていたものを、ローレンツプロットを用いて周期倍分岐のカスケードとして考察した。これによって同波数ピークの増大減衰のパターンが説明された。15EA04:3.1990年ルソン地震における断層形態自己相似性を解析し、この断層運動から推定される高周波地震波を計算した。これは、断層が詳細に観測できる今回の兵庫県南部地震にも適用することが可能であり、その応用がさらに広まるものと期待される。
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