琵琶湖あやめ浜沖における地下水漏出量の連続観測によって、1994年3月から8月にかけて、地下水漏出量の減少が確認された。これは、降水量の減少による湖水位及び湖底地下水の動水勾配の低下が原因である。また、地下水漏出量と動水勾配の周波数分析の結果、地下水漏出量については68分16秒と44分43秒を中心とする卓越周期が、また動水勾配については70分22秒と39分50秒を中心とする卓越周期が得られた。この様に地下水漏出速度と動水勾配の卓越周期が一致し、これらの周期は、琵琶湖固有の湖面振動である静振の周期とも一致することから、琵琶湖の静振による地下水漏出量の変化が認められた。さらに、風波による波高と地下水漏出量との解析から、波高の上昇にともない地下水漏出量が増大することが確認された。風波の期間中、動水勾配はあまり変化していないことから、風波による湖底砂層のルーズパッキング化にともなう透水係数の増大が、地下水漏出量の増大の原因と考えられる。イベント降雨に対する地下水漏出量の応答は、観測期間の降水量が少なかったため、定量化はできなかったが、降雨に伴う湖底地下水の動水勾配の増大及び地下水漏出量の増大が観測された。本研究によって開発されたヒートパルス式自己漏出量計は、従来困難であった地下水漏出量の連続観測を可能にした。この自記地下水漏出量計を用いた研究は、湖水と地下水の相互作用を明らかにするうえで、重要な役割を果たすと考えられる。
|