本年度行った研究内容は、成層圏と対流圏の力学的相互作用を本格的に研究する予備段階として、成層圏の力学過程そのものの再検討と、成層圏・対流圏の相互作用を数値的にシミュレートするための全球スペクトルモデルの開発である。成層圏の力学過程のうち、1)オゾンの南北半球の緯度分布の違いにプラネタリー波がどのような役割を果たしているか、2)季節変動に重力波が果たす役割、を再検討した。 オゾン層の紫外線吸収による加熱は成層圏の循環場に大きな影響を及ぼしている。オゾンの子午面分布は北半球と南半球で大きく異なっている。この違いが南北半球のプラネタリー波の強度の違いによって生じうることを数値実験によって明らかにした。この内容は、気象集誌1994年10月号に掲載された。 成層圏の力学過程で、重力波は上部成層圏から下部熱圏の風系に対して大きなブレーキ効果をもたらしていると考えられている。今回行った2次元モデルを用いた数値実験により、観測地と類似した下部熱圏の風速逆転層が、重力波の減速効果で形成されることが示唆された。重力波のパラメタリゼーションの方法に対する結果の依存性などを明らかにしたうえで、近く論文として発表する予定である。 必要に応じてモデルの水平及び鉛直空間分解能を上げられる全球スペクトルモデルを開発を行った。本年度はモデルのデバック作業としての予備的な数値実験を行うにとどまり、成層圏との相互作用を具体的に解析できるような結果を出すまでにはいたらなかった。 本年度の研究で明らかにされた知見を引き継ぎ、今回構築した数値モデルを活用して、対流圏・成層圏の相互作用の研究を行っていく予定である。
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