研究概要 |
1.DMSP衛星に搭載されたマイクロ波放射計(SSM/I)による南極氷床の輝度温度画像が収録されているCD-ROMからデータを読みだし、地形データ解析用ソフトウェアを用いて画像処理を行った。 2.19GHz、37GHzの輝度温度の季節変化を解析した。その結果、南極氷床の内陸ほど37GHzの冬期の低下量が19GHzの低下量より大きいことが明らかになった。こういった減少は標高が3,000mの投稿線に囲まれた内陸高原域で起こることがわかった。 3.内陸高原域では冬期の温度低下が沿岸域より大きく、表層の温度勾配も大きくなる。これにより表層付近で下から上への水蒸気輸送が起こり、表層付近の雪粒子の霜ざらめ化が起こって粒径が増加することが関係する。 4.一般に雪粒子の粒径が大きくなるとマイクロ波の散乱がより顕著になり、観測される輝度温度は低下する。波長が短い37GHzの方が19GHzの場合よりも、積雪のより浅い部分の情報を反映する。したがって、霜ざらめ化による表面付近の雪粒子の粒径の増加を反映して37GHzの輝度温度の低下量が大きくなると考えられる。 5.これにより地域により異なった堆積環境下にある南極氷床の表面付近の構造を推定することができる。この情報は氷床コアの解析結果を解釈する情報にもなる。 6.今後は、実際に現地で表面付近の構造の変化を通年にわたって観察する必要がある。今回は内部の構造との関連を調べたが、マイクロ波の放射には表面の形状(凹凸等)も関連すると考えられる。合成開口レーダー等による能動型センサーによるデータを活用していく必要がある。
|