研究概要 |
本研究においては,日高変成帯・飛騨変成帯・日本国片麻岩分布域の花崗岩質〜はんれい岩質マイロナイトに発達する複合面構造の種類(S,C,C'面)と,マイロナイト化作用による細粒化の程度・組織との関係,そしてマイロナイト形成時の温度条件との関係について検討した.野外調査・顕微鏡下における観察と測定・EPMA分析の結果,以下の事柄が明らかとなった.地域によらず,マイロナイト中のポ-フィロクラストの量比(PCP)が10%未満になると,C'面は無く,S,C面が発達する.これは,動的再結晶作用により形成された細粒鉱物が岩石全体の変形作用を支配し,延性度が増加したためであろう.また,50%および30%のPCPを境にして,発達する複合面構造の種類は変化しないが,ポ-フィロクラストの伸長度・再結晶鉱物の粒径などが変化する.このことは,形成温度・構成鉱物種が同じであっても,細粒鉱物の増加によって,形成組織に変化が生じることを示している.また,原岩種が同じでPCPが10%以上のマイロナイトについてみると,800〜700℃で形成されたマイロナイトにはS,C面のみが観察され,主要構成鉱物は全て延性的変形を示す.一方,600〜300℃で形成されたマイロナイトにはS,C面と共にC'面が強く発達し,主要構成鉱物は必ずしも延性的変形を示さない.両マイロナイトに共通しかつ構成比の大きい鉱物である斜長石の変形についてみると,前者の高温型マイロナイトでは延性的であるが,校舎の低温型マイロナイトでは延性-脆性境界領域におけるものである.これらのことは,斜長石の変形特性がC'面の有無を支配し,有無の境界温度条件が約600℃であることを示している.以上のことは,複合面構造の種類を識別し,主要構成鉱物の組織的特徴を比較・検討することが,マイロナイトの形成温度を大まかに見積もるための一つの指標となり得ることを示している.
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