白亜系と第三系とが不整合関係で分布し、かつ炭質物と自生鉱物の共存する試料が採取可能な東北日本の2地域(北海道石狩、岩手県久慈)を選び、計11日の野外調査と試料採取を行った。また、比較のため西南日本の4地域(熊本県天草、長崎県高島、山口県美祢、福岡県北九州)において計5日の補足調査と試料採取を行った。各地域から採取した70点の試料について、自生鉱物種の同定・鉱物に含まれる流体含有物の均質化温度測定・固体有機物の変成度の決定を行った。その結果判明した、各地域における堆積岩の続成度(固体有機物のvitrinite反射率の値、自生鉱物種)、流体包有物の均質化温度は次のとおりである。石狩地域白亜系:diagenesis stage(〜0.8%、特徴的な自生鉱物は識別できず)、〜120℃、石狩地域第三系:diagenesis stage(〜0.7%、イライトースメクタイト混合層鉱物)、〜110℃、久慈地域白亜系:early diagenesis stage(〜0.4%、スメクタイト、斜プチロル沸石)、〜80℃、久慈地域第三系:early diagenesis stage(〜0.4%、スメクタイト)、〜80℃、天草地域:metagenesis stage(〜3.5%、イライトースメクタイト混合層鉱物)、〜230℃、高島地域:diagenesis stage(〜0.7%)、流体包有物が微細で均質化温度は測定できず、美祢地域:metagenesis stage(〜3.0%、イライト)、〜220℃、北九州地域:diagenesis stage(〜0.5%、スメクタイト、斜プチロル沸石)、〜80℃。野外調査結果および測定結果をもとに古地温勾配を試算すると、石狩地域のある測線では0.8℃/100m、西南日本では2〜16℃/100m(地域毎に変化が大きい)となり、続成一変成条件として従来いわれていた低温高圧型(東北日本)・高温低圧型(西南日本)の対を定量化することができた。白亜紀以降の西南日本の古地温環境および地殻熱流量は、東北日本のそれに比べ高いことを示す。
|