研究概要 |
両白山地では,0.7Maを境に九頭竜火山列から白山火山列へと,第四紀火山の配列方向が変化したことが明らかにされている。今回,両火山列の交差する地域に位置する大日ヶ岳火山の研究を中心に,両白山地に産する第四紀火山岩の岩石学的性質の時間変化を明らかにすることを目的とした研究を行った。 まず,大日ヶ岳火山の旧期と新期の溶岩120試料について,全岩の主成分化学組成を求めた。その結果,(1)旧期の溶岩が51〜64%のSiO_2幅を示すのに対し,新期の溶岩は58〜61%と狭いSiO_2範囲に納まること,(2)同じSiO_2量の試料を比較した場合,旧期の溶岩は新期のものよりK_2O量に乏しい事などが明確になった。また,これれの溶岩20試料についてK-Ar年代を測定した。そして,旧期の溶岩からは0.97±0.04Maの,新期のものからは0.95±0.03Maの結果が得られ,新旧の活動期の溶岩ともに九頭竜火山列に属することを確認できた。 次に,今回のデータとこれまでに報告されているデータを用い,両白山地に産する火山岩の全岩化学組成の時間変化をハーカー図において検討した。それにより,(1)白山火山列の0.1Maより新しい溶岩は,大日ヶ岳火山の新期溶岩を除く九頭竜火山列の溶岩と同程度のK_2O量を有すること,(2)それに対し,白山火山列でも0.3〜0.7Maの溶岩は大日ヶ岳火山の新期溶岩と同じかそれより乏しいK_2O量を示すことが明らかになった。つまり,このことは,「0.95〜0.3Maの両白山地ではその前後の時期に比べK_2O量の乏しいマグマが活動し,しかもこのマグマの性質の変化と火山列の変化とは必ずしも対応していない」という可能性を示唆している。ただし,データが充分に揃っていない火山も存在し,今後さらなる検討が必要である。
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