大気中のメタンの約20%は化石燃料起源のメタン(天然ガス、石油・石炭に伴うメタン)と推定されている。しかし、天然ガスや石炭・石油鉱床から漏出するメタンの実測例はほとんど無い。本研究ではガス田における大気中のメタンの濃度分布からメタンの放出域や放出量を調べることを目的とした。 房総半島の茂原ガス田南部の約10キロ四方の地域をテストフィールドとして、地表での大気中のメタンの濃度分布を測定した。メタンの測定には非メタン炭化水素を酸化除去する白金触媒と水素炎イオン化検出器(FID)を組合わせたメタンの連続測定装置を用いた。これを自動車に載せ、移動しながら測定を行なった。 測定の結果、数kmの範囲にわたって大気中のメタン濃度がバックグランド濃度よりも高い場所や、メタン濃度が数十ppmvに達する地点が存在することがわかった。本実験で得られたメタンの濃度分布は天然ガスのおおよその放出域に相当するものと考えられ、ガス田から確かにメタンが放出していることを示している。また、メタンの濃度分布とその場所の地質を比較すると、濃度の高い場所が沖積層と堆積岩層の境界部分と一致する様な結果が得られた。これは沖積層下部に集積した天然ガスが沖積層と堆積岩層の境界を通って大気中に放出している可能性を示唆するものと考えられ、天然ガスの大気への放出のメカニズムを考える上で興味深い。 今回の測定で発見された一つのメタンのプルームについて大気中の拡散モデルを用いてメタンの放出量の推定を行なった。しかし、ガス田全体からの放出量を測定するためには更に詳細なメタン濃度分布や、その時間変化、気象条件等が必要であり、今後の課題として残された。
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