研究概要 |
工業技術,医療などへの利用価値が高い金属資源のほとんどを産する,天然の鉱床の生成プロセスを解明することは非常に重要である。また鉱床の研究は,地球内部における元素の濃集メカニズムを始め,地球上で起きる様々な現象を探る手がかりになる。本研究では,以下5つの主だった成果が得られた。そのほとんどが,モリブデン鉱床の信頼度の高い生成年代の決定技術を有するのが,世界で本報告者のみであることを利用している。(1)鉱脈型,スカルン型,グライゼン型,などモリブデン鉱床のタイプによって冷却速度,すなわち鉱床の生成深度が異なることを示した。この事実は鉱床の生成過程の研究に今までない知見を与えると共に,その地域の地質学的歴史を知る上でも大きな成果である。(2)レニウム-オスミウム(Re-Os)系の閉鎖温度の推定に初めて成功した。放射年代測定法の系の閉鎖温度は,隕石,地球の進化を議論する上で,大きな情報となり,今後太陽系の進化に関して新しい知見を与えることが予想される。(3)モリブデナイトの変質と近赤外光の透過度との関係を明らかにした。さらに,変質でそのRe-Os年代が変化することを実験的に示した。これは今後Re-Os年代の信頼性を議論する上で重要な事実である。一方,得られたRe-Os年代が信頼度を評価する方法も同時に示した。(4)鉱床の生成年代の視点から,環インド洋地域の形成史に関して知見を与えた。鉱床の生成年代は世界的に見ると,27億年,5億年などある時期に集中していることが本研究でもわかっている。これは地球全体での元素のサイクル及び進化を考える上で重要である。さらにデータが集まれば,地球の進化史の解明に新しい視点を加えるであろう。(5)モリブデナイト以外の一般的な硫化鉱物について年代を得ることに成功した。鉱床の生成プロセスの研究には大きな進歩と考えられる。(4)に関して裏面に記す論文として公表し,(1),(2),(3)は準備中である。
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