本研究の主たる目的は超音波吸収測定法として用いられていた光偏向法の改良を行い5MHz〜50MHz域での音速測定手法を確立し、従来からの測定法とあわせると5MHz〜10GHzという非常に広い周波数領域での測定を可能とし、広い緩和時間の分布をもつ高粘性液体の超音波緩和スペクトルを緩和全領域で得ることができるようにすることである。 まず、光偏向法を改良した位相敏感検波法による音速度測定装置の開発を行った。S/Nを向上の目的のためにロックインアンプを導入した。これにより、水による測定においては当初の予測より高周波数である75MHzまで音速度の測定が0.1%程度の誤差で行えるようになった。この周波数領域での液体の音速度を一つの測定装置で測定できる高精度の音速度測定装置ができたことは大きな成果であり、現在この成果を論文として投稿中である。しかしながら、今回用いたセルでは光プローブの透過する位置が音源の位置が遠く、このため高い吸収をもつ高粘性液体の測定では、比較的吸収の少ない高温側で5MHz〜25MHz周波数域における測定しか行えなかった。光プローブの透過する位置と音源の位置をちかづけることにより高粘性液体での測定が可能なる。 低分子量高分子高粘性液体の単分散ポリエチレングリコールの音速度測定を100MHz〜10GHzの領域で測定を行い低温側でデバイ型緩和よりもブロードな緩和が観測され、これまで本研究室で行われたフタル酸ジイソブチルやリン酸トリオルトトリルの緩和との共通点が見いだされた。
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