電子移動反応における反応体の拡散の効果を、特に電荷再結合反応に注目して調べた。光誘起分子間電子移動反応では電荷分離反応が起きたあとイオン対が出来るが、このイオン対が無限遠方に離れる前に、再結合反応するものがある。この再結合反応は常に拡散過程と競争して起り、電荷分離反応とは違った特別な考慮を必要とする。Burshteinらは、反応体同士が接触しないと電子移動が起こらないモデルにおいて、イオン対の濃度は時間の平方根の逆数で減衰することを示した。ところが実験的にはイオン対の濃度は時間とともに指数関数的に減衰することが確かめられている。そこで本研究では。電子移動速度の反応体間の距離依存性をより現実に近いモデルを使うことにより、指数的な減衰が得られる条件を調べた。まず、電子移動速度が反応体間の距離について、ある領域では定数になり、それ以外の所では、0になる簡単なモデルをたてた。このモデルについては、解析解を得ることに成功したので、その解から指数関数的に減衰するためには、反応速度kと反応が起る領域の幅Lと拡散係数DのあいだにkL^2/D>>1の関係がなければならないことを示した。また、イオン対が指数関数的に減衰する割合が多い場合には量子収率が少なくなることも得られた。更に、電子移動速度のより現実的な距離の依存性について反応拡散方程式を数値的に解いた。電子移動速度の距離依存性についてはMarcusの式に従って、再配向エネルギーにも距離依存性を含めた。このモデルを使って、指数関数的な減衰がどのパラメータで起るかを調べた。
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