研究概要 |
気相二、三原子分子では磁場効果を示す例が非常に少ない。またそれらはいずれも直接機構を示す。一方、四原子分子以上の多原子分子で磁場効果(磁場消光)を示すものはほぼすべてが間接機構のみを示し直接機構は示さない。更に、定量的には気相磁場効果を満足に説明できないというのが現状である。気相磁場効果をより深く理解し外部磁場による反応の制御と言った方向に更に進むには小さな分子の気相磁場効果を定量的かつ系統的に研究することが必要である。 本研究では、ハロゲン及びインターハロゲン二原子分子のB状態からの蛍光強度に及ぼす磁場効果を調べた結果、Br_2及びIBrは磁場消光を示すがIClとCl_2は示さないことがわかった。磁場強度依存性からBr_2,IBrの磁場消光はいずれも直接機構により説明されることがわかった。寿命と磁場消光の度合い(消光比)を比較することにより両者の間に良い相関の存在すること、つまり寿命が長い程消光比は大きく、寿命が短くなるに従い消光比も小さくなるということがわかった。Br_2およびIBrのB状態はいずれも前期解離を示し、前期解離の強い準位程その寿命は短くなる。寿命の長い準位は磁場によりその寿命は大きく短縮される一方、寿命が短い準位は磁場による寿命の短縮は小さい。このことから、磁場消光が強く出るためには磁場により誘起される無輻射遷移の速度が、発光準位のもともとの減衰速度と同程度あるいはそれ以上ででなければならない(必要条件)ということができる。
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