研究概要 |
真空紫外域に対応する分子の高励起状態は、紫外域に対応する低い励起状態では見られない動的挙動を示す。本研究は、大気光化学反応を理解する上で必要不可欠である塩化エチレン類の真空紫外域から紫外域での光分解過程に注目した。 二次元画像観測法により、塩化エチレン類(trans-、cis-、1,1-、ジクロロエチレン、塩化ビニル)の光分解で生成した塩素原子のスピン軌道状態を選別しながら、その並進速度分布及び空間角度分布を測定し、光解離機構を明らかにした。 193nm及び235nm光分解で生成する塩素原子の並進エネルギー分布は、ともに高い異方性を持つ高エネルギー成分と、等方的な空間分布を示す低エネルギー成分からなる。真空紫外域での光分解は主に低エネルギー成分を示し、紫外域では、主に高エネルギー成分を示した。塩素原子の解離過程には、少なくとも2つの解離過程が存在する。高エネルギーの塩素原子は、ガウス型の並進エネルギー分布を示し、低エネルギー成分は,Maxwell-Boltzmann分布を示した。高エネルギー成分の塩素原子生成は、(π,π^*)状態から(n,σ^*)状態への内部転換を経由する解離であり、しかも分子回転(<1ps)よりはやい解離によって起こっていることが分かった。低エネルギー成分の塩素原子は、(π,π^*)状態から基底状態への熱的な解離により生成することが分かった。 2光子共鳴差周波4波混合法により真空紫外レーザーの発生を試みた。水素原子のイオン化検出について、Lymann-α(121.6nm)による【1+1】共鳴多光子イオン化法と、243nmでの【2+1】共鳴多光子イオン化法を比較検討した。その結果、真空紫外レーザーによる【1+1】共鳴多光子イオン化法が、より高感度であることが分かった。
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