研究概要 |
1.高耐熱性の高分子として、ポリイミドのカルボニル基をケイ素骨格で置き換えたポリジシラザンを設計した。その合成のため,1,2,4,5-テトラキス(クロロジメチルシリル)ベンゼンとフェニレンジアミンの反応をトリエチルアミン存在下で行った。アミン塩酸塩が生じており、明らかに縮重合反応が起きているが、生成物が有機溶媒に不溶性であったため、現在のところ詳細な構造解析・物性評価には至っていない。今後、ケイ素上の置換基やジアミン部分の骨格を検討し、可溶性の高分子合成を行う。また、モノマーとしてヒドロシランとアミンを用いる脱水素反応や、アミノシランとアミンを用いるアミノ基交換反応による別途合成法に付いても検討を行う。 2.完全にアミノ基で置換したポリシランを合成するため、ビス(ジイソプロピルアミノ)ジクロロシラン(1)のアルカリ金属による還元的縮合を検討した。この反応ではポリマーは得られなかったが、予想外で興味深い生成物が得られた。すなわち、1をトルエンおよびベンゼン中で還元すると、それぞれベンジルビス(ジイソプロピルアミノ)シラン(2)およびフェニルビス(ジイソプロピルアミノ)シラン(3)が高収率で得られた。これらの生成物は1の還元で発生したビス(ジイソプロピルアミノ)シリレンが溶媒のC-H結合に挿入したものである。この特異な反応は置換基の大きな立体障害のためアミノ基とシリレンの孤立電子対同士が強制的に同一平面上に固定化されることに起因する。この電子対間の反応の結果、シリレンの1重項基底状態は不安定化し、通常は反応に関与しない3重項状態のラジカル的な反応が起きたと考えられる。すなわち2と3はシリレンの水素引き抜きおよび芳香族付加反応を経由する生成物である。シリレンのラジカル的な反応は従来例がなく、今後ESRによる直接的な観測を含め、さらに検討する予定である。
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