研究概要 |
本研究では9-位に不斉中心を持った置換基を有するアントラセン誘導体について均一溶液、結晶、包接化合物等、種々の反応場における光二量化の反応性や生じた二量体の立体化学から、各反応場での隣接分子同士の相互作用、特に分子集合体を形成する際にホモキラルな会合とヘテロキラルな会合の分子間相互作用の差異を明らかにすることを目標としている。今回はまず、一つの極性基を持った種々の誘導体の合成と光反応生成物の同定から着手した。 アルコール(X=OH)は基質が酸化されやすく光反応性を充分に調べることが出来なかったが、X=OAcではいずれもベンゼン溶液中、head-to-tail dimerをdl:meso=1:1で与えた。また、固相ではR=Meの化合物は反応性が低く選択性も見られなかったが、R=Et,i-Prでは短時間の光照射で定量的にmeso体のみを与えた。X線結晶構造解析の結果、R=Et,i-Ptでは対称中心で関係づけられるアントラセン環同士が平行に3.5Å程度の両間距離でスタッフしており、一方R=Meの結晶では二量化に好都合のパッキングはとっていないことがわかった。 X=NH_2についてはR=Meしか合成できていないが、この化合物はベンゼン中、塩酸酸性水溶液中のいずれにおいても光二量化が進行した。水溶液中で、γ-シクロデキストリンへの包接を検討したが、蛍光スペクトルに変化が見られなかったことより結合定数は低いものと思われ、これは9-位の置換基の立体障害が大きいためと考えられる。
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