研究概要 |
平成6年度は、まず、高スピンポリ(アミニウムラジカルカチオン)の前駆体であるトリアリールアミン類を合成した。すなわち、ピリジン中での銅アミドとヨウ化アリールとのカップリングを用いて、メタ位で連結したトリアリールアミン類の合成を行い、パラ位にt-ブチル基を有する一連のモノ、ジ、トリ、ペンタアミンの合成を完成させた。さらにラジカルカチオンを電子的に安定化させるために、パラ位にメトキシ基を導入したモノ、ジ、トリアミンを合成した。サイクリックボルタンメトリー、ESR、UV-VISスペクトルを用いて対応するアミニウムラジカルカチオンへの酸化について検討したところ、これらのジ、トリ、ペンタアミンは、メタ位でつなげていった場合、室温で安定なラジカルカチオンを与えるのはジアミンまでであり、トリ、ペンタアミンではジ(アミニウムラジカルカチオン)への酸化以降、複雑な副反応を伴い、分解物としてモノ(アミニウムラジカルカチオン)を与えることがわかった。ジアミンに関しては、他のアミニウムラジカルを酸化剤とすることにより、ジ(ラジカルカチオン)を得、低温でのESRスペクトルからD=12.5mT程であることがわかった。上記アミニウムラジカルカチオンの不安定性はオルト位でのカップリングによるものと考え、ジメシチルアミン及びビス(2,4,6-トリクロロフェニル)アミンより導かれる銅アミドとと1,3,5-トリヨードベンゼンのカップリングを試みたが、期待したトリアミンは得られなかった。そこで、より立体障害が少なくポリ(アミニウムラジカルカチオン)の安定化の条件を満たすと考えられる系の構築を目指して、6,6'-ジクロロ-2,2'-イミノジベンジルを用いて同様の反応を行なったところ、期待したトリアミンが得られた。現在、このトリアミンの酸化を検討中である。
|