研究概要 |
本研究では申請者らの作製した高温NMR装置を用いて、高温で構造相転移を引き起こす無機結晶化合物について多核高分解能NMR測定を室温から1800℃迄の高温下その場で行った。 スピネル型化合物(代表組成:MgAl_2O_4)の27^<Al>核測定では、1700℃に至る温度範囲での高温下その場NMR測定に成功した。その結果、この化合物で知られている4、6配位席間の交換反応を伴う相転移について、秩序-無秩序度を見積もることが出来た。従来、急冷試料でのみ測定が可能であったため、1300℃までの温度で理解されていた秩序-無秩序転移について、本研究によってさらに高温での測定値を提供することができた。また、1400℃をこえる温度では、27^<Al> NMRの線形に大きな変化が現われ始め、このことは、4,6配位席間の交換反応の様式に関して新たな情報を与えるものと考えられた。また、その詳しい解析から交換反応速度を導くことができ、その意義は大きいものと考えられる。これらの結果については、現在投稿準備中である。 従来、結晶相転移の問題について、X線などの回折法により多くの情報が得られてきた。しかし、固体高分解能NMR法が発達するにつれ、X線的に解決しづらい問題、例えば、セラミクス材料、鉱物中の微視的配位環境の決定などにNMR法が大きな寄与をするようになった。本研究で、構成元素各々についての情報を与えてくれる多核NMR法を高温領域まで拡張し、その場観察することが可能となった事により、高温無機材料の構造相転移の問題に新たな方法論が提供できたものと考えられる。
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