研究概要 |
四座のシッフ塩基(L)を配位子とするオキソバナジウム(IV)錯体[VO(L)]は、通常、四角錐の単核構造をとるが、配位子Lのジアミン部分が6員キレート環を形成する場合、結晶中で分子がV=0…V=0…V=0のように連なった一次元鎖状構造を形成する。本研究では、ジアミン部分に(R,R)-2,4-pentanediamineを導入したシッフ塩基-V(IV)錯体、[VO(L_1)](図1)を合成し、6員キレート環部分のメチル基の立体的な効果により、6員キレート環の配座ならびに錯体の構造がどのように変化するか調べた。 配位子H_2L_1とVOSO_4.5H_2Oを反応させ、錯体を合成した。得られた錯体は一次元鎖状構造をとることが1Rスペクトル(ν_<(V=0)>=868cm^<-1>)から明らかになった。さらにこの錯体をCH_2Cl_2から再結晶し、単核構造の錯体(ν_<(V=0)>=985cm^<-1>)を得た。(図2)ジアミン部分に6員キレート環を含むシッフ塩基-V(IV)錯体で、このような単核構造の錯体が得られたのはこれが初めてである。この錯体の6員キレート環は扁平な舟形をとり、一方のメチル基がターミナル酸素(V=0)と反対方向のアキシャル位に配向している。また、サリチルアルデヒド部分の二つのエトキシ基は互いに反発を避け、上下のアキシャル位に配向している。このようにメチル基とエトキシ基がそれぞれアキシャル位にに突き出ているため、分子のターミナル酸素が別の分子のV原子に近づきにくく、単核構造を形成すると考えられる。
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