研究概要 |
金属イオンを含む分子集合体は電気伝導性化合物に代表されるように多種多様な立体構造と酸化状態を取ることが可能であり、単核には見られなかった新規な物性や機能を発現することから興味が持たれる。このような機能性分子集合体を構築するためには単核および二核錯体ユニットを橋かけ配位子やspacerを用いて秩序正しくつないだり積み重ねたりすることが必要不可欠である。本研究では二核Pd(I)錯体を橋かけ配位子を用いてつないだ一次元鎖状多核Pd錯体の構築を試み、その系統的合成法を確立する共に、その構造および性質を明らかにした。 具体的には二核Pd(I)錯体[Pd_2(dppm)_2]^<2+>(1)(dppm=1,1′-ビス(ジフェニル)フォスフィノメタン)をprecursor錯体とし、橋かけ配位子である1,4-ジイソシアノベンゼンや4,4′-ビフェニルジカルボニルなどを反応させ一次元鎖状Pd錯体の構築を行ない、これらの構造をNMR、IR、元素分析などから明らかにした。またこれらの詳細な構造を明らかにするため単結晶化を行ない、現在単結晶X線構造解析を行なっているところである。さらにこれら一次元鎖状Pd錯体に機能を付与させるため部分酸化やオレフィン類などとの反応も行ない、その物理化学的性質も明らかにした。 今後、SやP原子を含む種々の橋かけ配位子を用いて、新規な多核Pd錯体の合成を試み、その構造および性質を明らかにして行く予定である。
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