研究概要 |
d-fブロック遷移金属混合型錯体として、とくに反応性に富んでいる二価ランタノイドを含む混合型錯体について重点的に研究を行なった。 まず、当研究室で開発したYb(II)-ベンゾフェノンジアニオン錯体[Yb(μ-η^1,η^2-OCPh_2)(HMPA)_2]_2を用いて、二当量のCpMo(CO)_3と反応させ、Yb-Mo混合型錯体の合成を試みた。この場合は、対応する二価イッテルビウム錯体Yb(HMPA)_4(μ-OCMo(CO)_2CP)_2が50%収率(Mo基準)で得られ、その構造をX線構造解析により明らかにしたが、この錯体は中心金属Yb(II)に強い電子供与力をもつHMPA配位子が配位しているため、三価のイッテウビウム錯体[Yb(HMPA)_5(μ-OCMo(CO)_2CP)][CpMo(CO)_3]_2に不均化しやすいことがわかった。 次に、HMPA配位子をもたない二価ランタノイドアミド錯体Ln(N(SiMe_3)_2)_2(THF)_2(Ln=Sm,Yb)を用いて、d-ブロック遷移金属カルボニルヒドリドCpM(CO)_3H(M=Mo,W)との反応を行なった。これらの反応から対応する二価ランタノイド混合型錯体{Ln(THF)_n(μ,η^1-OC)_2M(CO)Cp)_2}∞(n=3,4;Ln=Sm,Yb;M=Mo,W)が高収率で得られた。X線構造解析により、これらの錯体がすべてポリマー構造を持つことが明らかになった。 本研究で得られた混合型錯体は二価ランタノイドを含むd-fブロック遷移金属混合型錯体として数少ない例であり、新しい反応の開発に役立つことが期待される。
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