研究概要 |
電解による気体発生の元で測定可能なX線吸収分光法用セルを開発・作製し、世界で初めて電解水素を発生中の白金電極の構造・電子状態を測定することに成功した。活性炭担持白金を成型したものを陰極とし、背面に多孔質テフロン膜を密着する。背後を真空にすることにより、電解液はそのままで、発生する水素が泡になる前に取り除くことができる。透過法でスペクトルを測定するため、電極を背後から支持する多孔性板は炭素製である。このセルを用い、高エネルギー物理学研究所放射光実験施設ビームラインBL-10BにてXAFSスペクトルを測定した。1M-硫酸中では泡の発生を伴わず、十分な信号/雑音比が得られる限界の電位は、電極の厚さに大きく依存したが、0.4mm厚の電極にて-1.0V vs Ag/AgClであった。一方、これらの工夫を伴わない、従来のセルにて測定したところ、-0/3V vs Ag/AgClにて、泡の発生、成長、脱離によると考えられる吸光度の変化にて、もはやスペクトルは解析不能であった。3種類の平均粒径(3.7,1.5,0.8nm)の白金微粒子電極のL2,L3端のホワイトラインの強度から空5d電子密度を見積もった。しかしこの物理量は、平均粒径にかかわらず、水素発生領域においては電位にあまり依存しなかった。また、微粒子は金属状態でEXAFSから求まる白金-白金の結合距離、配位数などの構造パラメータも電位には依存しなかった。水素領域、二重層領域、酸化物領域では電子状態・構造の大きな変化が認められたが、それとは対照的であった。
|