研究概要 |
人工酵素モデルとなるようなアームドクラウンエーテルを開発する目的で,3,5-ジメチル-4-ヒドロキシベンジル基を側鎖に持つ化合物(1,2)およびそお金属錯体の合成を行った. 合成方法:モノアザ-15-クラウン-5およびジアザ-18-クラウン-6を出発物質として用い,メトキシメチル化した後,2,6-ジメチルフェノールを反応させ,1および2を得た.次いで1および2をアルカリ金属チオシアン酸塩(CsSCN,RbSCN,KSCNおよびNaSCN)と反応させ,金属錯体を得た. 錯体の構造解析:得られた錯体の構造を元素分析,IRスペクトルおよびX線結晶構造解析によって検討した.元素分析の結果,錯体はすべてクラウンエーテルと金属塩の1:1錯体であることがわかった.IRスペクトルでは,v(O-H)が2のアルカリ金属チオシアン酸錯体と2,6-ジメチルフェノールではほとんど同じ位置に見られたが,1の錯体では2,6-ジメチルフェノールよりも約300cm^1低波数側にシフトしていた.このことから,1の錯体では側鎖のフェノール性水酸基が金属イオンに配位していることがわかった.そこで,これらの錯体のX線結晶構造解析を試みた.図1に1のRbSCN錯体の構造を示す.Rb^+イオンはクラウン環の4個の酸素と1個の窒素および対アニオンのSCNの窒素および最近接分子のフェノール性水酸基の酸素原子の計7つのヘテロ原子によって配位されており,高分子状の(1:1)n錯体であることが明らかとなった.このような構造を持つ錯体はこれまでほとんど報告例がなく,人工酵素モデルのみならず,新規な機能性ホスト化合物としての応用も期待できる.現在,1の錯体を利用した酵素機能について鋭意検討を行っている.
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