研究概要 |
圧透析は,電気透析あるいは逆浸透のような通常の膜分離に代わるカン水からの純水製造や海水濃縮に対する新しい技術として期待されている。本研究では,まず陽イオン交換基としてスルホン酸,陰イオン交換基としてトリメチルアミンをほぼ同数(0.11meq./g)保持した両性膜を作製し,加圧下における塩輸送の可能性を調べた。基礎実験として機械的圧力を加える代わりに,サッカロースの添加による浸透圧下での膜・KCl水溶液系における体積流束と塩流束を測定した。さらにこれらの流束値の結果について,非平衡熱力学に基づいた塩輸送現象の基礎的な解析を行ない,膜特性を表すパラメータである濾過係数,反射係数および塩透過率を見積り,単一型イオン交換膜から得られたものと比較検討した。両性膜の濾過係数は単一型のイオン交換膜に比べ約20〜30倍大きな値を示し,塩水をより通しやすい性質をもつことがわかった。また,反射係数の値は,0.47と小さく,塩は膜に引きつけられ膜内に取り込まれ易いことがわかった。さらに塩の通り易いさを表す膜透過率は,単一型イオン交換膜と比較すると,約500倍という大きな値を示した。このことは作製した両性膜が,体積流束よりも塩流束の方が大きく,水よりも塩を通しやすいことを示している。以上の結果より,この両性膜は塩水溶液系において塩を優先的に輸送し,海水濃縮やカン水の脱塩の可能性を有することがわかった。 本研究により,作製した両性膜は浸透圧下において塩輸送を促進することが示されたが,今後は機械的な高圧力に伴う塩輸送についての研究を計画している。
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