研究概要 |
1.電導性有機-遷移金属複合系は新しい型の分子システムであり、最近申請者らにより合成されたジアミノグリオキシム金属錯体とTCNQとの電荷移動錯体[M(HDAG)(H2DAG)]TCNQ(M=Ni,Pd,Pt)はその初めての例である。そこで、この錯体を最初のモデル物質として物質合成・物性研究を行なってきた。今回新規に金属配位子をエチレンジアミノグリオキシムに変えた物質を合成した[M(HEDAG)(H2EDAG)]TCNQ(M=Ni,Pd,Pt)。 2.この錯体の単結晶を用いて、室温から極低温までの電気伝導度・ESR・磁化率の研究を行ない、キャリヤ-の種類・濃度、伝導電子の散乱機構等の輸送現象について明かにした。 3.同じ錯体の単結晶をにおいて、赤外から可視、紫外域にいたる偏光反射スペクトルを測定した。結果を解析し、それらの電子構造と電荷移動励起状態の性質を明かにした。また赤外吸収分光・ラマン分光により、電子-プロトン結合に間するフォノンの興味ある知見を得た。 4.申請者のこれまでの研究によっても明らかなように、錯体結晶において圧力は極めて強い外部摂動効果として働く。高圧力は、結晶格子定数・エネルギーバンド構造・電子-電子相互作用・電子-格子相互作用等を連続的に変化させることにより、固体物性を変えることが可能な手法である。そこで、上記の錯体の単結晶において高圧下での精度の高い測定を行ない、圧力印加による物性変化について電気的性質と光学的性質を調べるため、実験装置を立ちあげた。今後実験、解析を行う予定である。
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