海洋産のポリエーテル系天然物であるヘミブレべトキシンB(1)の合成研究を行った。この化合物は赤潮の原因毒の一つとして渦鞭毛藻の一種Gymnodinium breveから単離された四環性の化合物である。興味深いことにこの魚毒成分は海産ポリエーテルに共通する神経毒性以外に腫瘍細胞に対する活性を示すことが知られており、医薬品への応用も期待されている。本研究では光学活性なd-マンノース2から出発し、有機スズ化合物の分子内環化反応を利用することによって、ポリエーテル骨格を構築するというルートをとった。その結果、ヘミブレベトキシンBに含まれる四つのエーテル環を有する化合物3を高立体選択的に合成することに成功した。今後さらに研究を続け、残る測鎖の導入を行いこの天然物の全合成を目指す。また、合成完了時にはその生理活性についてさらに詳細な調査を実施し、活性発現機構など生体内での動的挙動についての研究を行う予定である。また天然物そのものに対して各種の化学修飾を施し、その生理活性を調べることによって海洋産ポリエーテルの構造活性相関についての研究も行う。
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