研究概要 |
特異的な配位構造を有する種々の鉄(II,III)シッフ塩基錯体、大環状テトラアザおよびペンタアザ-コバルト(II,III)錯体の合成を行った。それらは、元素分析、IRスペクトル、紫外可視吸収スペクトルおよびサイクリックボルタンメトリーなど通常の方法にて同定確認を行い、望みの化合物が得られていることを明らかにした。それらのX線光電子スペクトル、特にM(2p)およびM(3s)スペクトルを測定し、得られたデータの解析を行った。つまり、メインピークの位置,メインピークの半値幅,メインピークの高エネルギー側に現われるサテライトピークの数,メインピークとサテライトピークとのエネルギー分裂幅,サテライトピーク強度などの観点よりまとめ直し、他のスペクトルデータや酸化還元電位および金属錯体の配位構造などとの相関を検討し、以下の結果を得た。 1.鉄錯体のFe(2p)スペクトルにおいては、メインピークの位置およびサテライトピーク強度により、中心イオンの酸化数および電子状態が推定できる。 2.Fe(3s)スペクトルにおいては、ほとんどの錯体において3つのピークへの分裂が認められ、スペクトルの形状が錯体の配位構造を反映して、特徴的なパターンを示した。 3.コバルト錯体のCo(2p)スペクトルにおいては、メインピークの位置は、環状化合物を除きあまり変化しない。 4.サテライトピーク強度より中心金属イオンの酸化数および配位構造が推定できる場合があった。 5.Co(3s)スペクトルにおいては、反磁性にもかかわらずピークが2つに分裂するものが認められた。 さらに、一部の鉄(III)錯体がX線照射により鉄(II)へ還元されることを見出し、それらの固相反応を検討するため時間分解X線光電子スペクトルを測定し、議論した。
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