研究概要 |
われわれは多機能タンパク質である酵母カルモデュリン遺伝子に系統的に変異を導入し,温度感受性変異株を多数作製した。注目したアミノ酸残基は、カルモデュリンの標的蛋白質との結合に関わっている8つのフェニルアラニン残基である。得られた14個のカルモデュリンの温度感受性変異株で特筆すべきことは、非制限温度下で4つの異なる表面型を示したことであった。すなわち、1)スピンドル・ポール・ボディの複製、2)出芽、3)アクチンネットワークの制御、4)カルモデュリン自体の芽の部分への局在化、という4つの独立の過程の特異的欠損を持っていた。さらに異なる表現型を持つ変異の間に、遺伝子内相補という現象が見られたことから、カルモデュリンの多重機能性が遺伝学的に立証された。さらに10種類の変異カルモデュリンを大腸菌内で発現させ、各々の蛋白質をSDS-PAGEで判断して単一バンドになるまで精製した。精製した蛋白質を用い、ゲルオーバーレイ実験を行なって、カルモジュリン結合蛋白質の一つであるカルシニューリンの触媒サブユニットとの結合を調べたところ、F12A,F16A,F19A変異を持つ変異カルモデュリンは、カルシニューリンとの結合活性を失っていた。カルシニューリンの変異株は、高Na+感受性、性フェロモン存在下の致死性等の性質を示すが、カルモジュリンのF12A,F16A,F19A変異も同様の表現型を示した。以上の結果から、カルモデュリンの標的蛋白質との結合に関するモデルを考案した。
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