研究概要 |
本研究では、オブジェクト指向言語としてC++を用い、再帰的確率密度生成関数を用いた寄主-寄生蜂系のシミュレーションモデルを構築した。寄主としてアズキゾウムシ、寄生蜂としてヒメバチの1種を用いた実験データの解析から、餌である豆の供給がどうしても離散的になってしまう閉鎖的累代飼育実験においては、寄主-寄生蜂系の存続性を決定する要因として、寄主の生育ステージのうち攻撃されやすい期間と、寄生蜂の攻撃可能な期間の一致の度合いが、重要になっているらしいということが示唆された。 そこで,再帰的確率密度生成関数として、ベータ分布に従う乱数発生装置を使って、時間数直線上にオブジェクトを発生させ、再帰的に繰り広げられる寄主-寄生蜂系のダイナミックスを生成した。オブジェクトはクラスのメンバーとしてベータ分布の2つのパラメターセットを持ち、それらの値によって、寄主の場合には発育期間とその中における幼虫期(寄生蜂に攻撃される時期)が決定され、寄生蜂の場合には発育期間と成虫時期(寄主を攻撃できる期間)が決定される仕組みになっている。そして各オブジェクトは線形リストに蓄えられ、時間的に最も古いオブジェクトから順次ファイア-していく形態にした。 分布パラメターを外的に設定したシミュレーションの結果、寄主の生育スケジュールと寄生蜂の生育スケジュールの組み合わせの中に、絶滅を導きやすいものと、比較的長く存続するものが認められた。今後は上記の結果を踏まえて、システム自体が絶滅しない系を構築するような生育スケジュールの組み合わせを形成できるかどうかを検討するために、自発的パラメター決定機構として遺伝的アルゴリズムなどを導入し、生育スケジュールの共進化の観点から研究を発展させるつもりである。上記の結果については、現在投稿論文を準備中である。
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