火山における植物群集発達機構を明らかにするために主として有珠山において調査研究を行った。合わせて米国セントヘレンズ山噴火後の植生発達様式との比較研究を行った。本年度の主な成果は以下の通り。 1.火山灰堆積地において微環境と実生の定着様式には強い対応関係が認められた。特に、地表面が軽石で覆われた所及びガリ-やリルの内部に実生は多かった。従って、実生出現には物理的なsafe siteの供給が必要不可欠なものと考えられた。 2.実生の多かった所の土壌栄養分(灼熱損量・NPK等)は実生の少なかった所と比べて必ずしも高い値は示さず、土壌栄養的なものよりもむしろ物理的要因が実生の定着には重要なものと考えられた。 3.旧表土中に生存する埋土種子集団を効率良く土壌中から抽出する方法を考案した。また、本手法は旧表土ばかりでなく、草地土壌等においても適用可能であることを示した。 4.Canonical correspondence analysisによる植生解析にあたり、植物個体数及び被度を用い比較した所、異なる環境要因が両者を規定していることが明らかとなった。このことは各植物種の栄養繁殖と種子繁殖の違いに起因しているものと考えられた。更に、種子侵入には周辺植物供給起源の質及び量が、植物発達には地表面の安定性が重要なものと考えられた。 5.有珠山とセントヘレンズ山では噴火に伴う撹乱強度の類似した生息地では群集構造的に類似した植生が発達しており、撹乱は初期植生構造を大きく規定しているものと考えられた。
|