本研究は、2つの効果(資源の空間分布が個体の相互作用にあたえる影響と個体の相互作用が資源の空間分布にあたえる影響)の相互影響を調べることが目的である。本年度は特に、資源の空間分布が個体の行動と相互佐用に及ぼす影響を調べるために実験を行った。実験は、寒天で培養した藻類を異なる空間分布で配置し(ランダム、集中、一様)、サカマキガイの行動をビデオで5日間記録した。最適採餌理論によると、個体の餌場所の滞在時間は、集中分布のとき最も長く餌に滞在し、一様分布のときもっとも短いと予測される。しかし、実際には、ランダム分布のときにもっとも長い滞在時間を示した。しかし、より小さなスケールでみると、餌場が近くに位置するときは頻繁に餌場間も移動していることが観察された。このことは、サカマキガイは、近隣の餌の分布は認識して採餌しているが、大きなスケールでの餌の分布を認識していないことを示している。Y字間による実験(一方に藻類をおき、貝がどちらに接近するかを調べる実験)によっても、サカマキガイは、約2.5cm以内に餌場しか認識出来ないことが示された。 複数個体をつかった相互作用の実験では、他個体が餌場に存在すると、餌場にアプローチしないことが多く、合計の餌場滞在時間は個体の間で大きな差がみられるようになった。直接的な個体間の接触は少ないことから、粘液やその他の物質を介して、お互いにさけあってるのかもしれない。 以上のような実験から、貝の採餌行動は、餌の空間分布に影響をうけるが、その空間分布のスケールによって影響がことなること、さらに他個体の採餌行動の影響を強く受けることがわかった。
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